持ち主に愛され、可愛がられていたバイクも長い年月のうちに壊れ、また、朽ちていきます。なかには良い持ち主に恵まれないままプロショップの隅で眠ったままのバイクもありましょう。
こうしたバイクのフレームが、何本か私のもとで復活の時を待っています。
狭い我が家にそうそうたくさんは置けないとは思いながら、何かの縁があっての邂逅です。ピカピカの新車時代、オーナーに愛されていたころの姿に少しでも戻してあげたい、と思っています。

<トラブルの経緯>2010/3/13
●台あるMASIのうち、一番最後、2001年にオーダーしたのが3V-Volmetricaです。他に例のないインナーラグを採用し、比較的(あくまで他のグレードに比べて、ですが)安価にMASIに乗ってもらおう、という意図のグレードで、確かにフルオーダーであの値段は安かったですが。まあどのグレードにせよ、当時、サイズ、色、フルオーダーであの仕上げ、あの値段、ってのは今ではちょっと信じられないかも知れませんが。
ともあれ、大事に乗っていたのですが2006年暮れにボトル台座が割れているのを発見! そのまま長期入院となりました。
修理方法として、台座付近を切り取ったうえで板を張り付けて補強する方法、いっそパイプを差し替えてしまう方法、の2つを検討した結果、パイプを差し替えた方が簡単で見栄えも良い、ということになりました。
パイプ差し替えにはフレーム製作設備が必要になります。諸般の事情で某所に設備が整い、某ビルダーの準備が出来るまで実に3年、南米商会に眠ったままでした。

<パイプをどうする?>2010/3/13
3V-Volmetricaはデダチャイ(Dedacciai)のSAT14.5というパイプを使っています。「デダチャイ・ゼロ」という通称の方が通りがいいかな? 外径31.7(31.8ではない!)mm、パイプ厚さが0.8/0.5mmのクロモリオーバーサイズで焼き入れ処理をしています。右のステッカーに小さくH.T.とあるのがその証。
残念ながら日本では、ダウンチューブだけを購入すると言うわけにはいいきません。実はアメリカに1本からでも売ってくれるショップがあるのを見つけたのですが…。
で、補修用に使ったのはカイセイ8630R。31.8mmで0.8/0.5mmとほんのちょっと外径が大きいのですがやむを得ません。こちらはクロモリではなくニバクローム鋼です。

銀ロウだった!!>2010/3/20
パイプの差し替えができるのは、ラグ付きフレームならではの修理方法です。ラグ接合ってのは、いわばハンダ付けの強力なヤツなので、継ぎ手(ラグ)とパイプをくっつけているロウを溶かしてやれば簡単に外れます。パイプが割れたり、凹んだり、曲がったりしても全体にダメージが及んでいない限り生き返る希望があるわけで、TIG溶接など他の方法ではこうはいきません。重たいとか何とか言われながらも、趣味の世界ではラグフレームがなくならないのが良く理解できます。
さて、抜き替えの際に、このフレーム、銀ロウを使っていることが判明しました。通常使われる真鍮ロウに比べて低温で付けることが出来るため、パイプなどへの影響が少ない優れた材料と言われていますが、何せ高価なので、超高級品にしか使われていません。
インナーラグの3VはMASIの中では普及品、という位置付けなので、差し替え作業をした某ビルダーも真鍮ロウのつもりで炙っていたら、うんと低い温度ですっぽりと抜けて驚いた、とのこと。ただ銀ロウにしては多少赤っぽいということでした。
にしても。このフレーム実は、2001年当時、サイズ、色フルオーダーで、150K以下でした。これに銀ロウとはね。そーゆーことをつらつら考えるに、最近再びクロモリブームとかでイタリアものなんか、吊しでパイプが歪んだようなのでさえ、すんげぇ値段がしているが、ありゃ、誰がぼったくってんのかね? いったい。
凸(-_-)
……と、脱線しちまったぃ。