自転車の趣味にはまってしまった人なら、誰でも憧れるのがフルオーダーの自転車。体格、走力、趣味に合った自分だけの1台というのは何ものにも代え難い魅力です。昨今のクロモリブームで昔ながらの職人さんが誂えるオーダーフレームは大変な人気だそうで、ブランドによっては1年以上待たされることも当たり前、どころか受けてもらえたら幸運とまで言われています。
ともあれ、いつかは乗りたいオーダー自転車。それなりの金額を
はたくのですから「こんなはずじゃなかった」と後悔はしたくないものです。

パイプの太さ・元々インチ
o inch
22.2mm 6/8inch
25.4mm 1inch
28.6mm 1 1/8inch
31.8mm 1 1/4inch
34.9mm 1 3/8inch
最近のクロモリブーム。細身のパイプのスマートさがいいんだとか。太くて異形のカーボンバイクから入った最近の方には、新鮮なんでしょうね。
で、形状を自在にできるカーボンバイクと違ってクロモリに代表される鋼系フレームのパイプ径には決まりがあります。あんまり意識されることはないと思いますが、俗にスタンダードパイプ、と呼ばれる規格はヘッド、トップチューブが25.4mm、ダウン、シートチューブが28.6mmです。時代が下って90年代になるとオーバーサイズ、と呼ばれる規格が出てきて、31.8mm。正確には31.750mmなので31.7mmとしているメーカーもありますな。
22.2mmてのはアヘッドステムが普及する前に使われていたクイル型ステムのコラム径。
全部半端な数字、何でや? というと元来がインチ規格だったため。ならそのまま通せばいいようなものですが、工業分野の国際規格を定めたISO(国際標準化機構)がメートル法を採用しているため。従来、inchでやってたのを国際規格に当てはめたのでこんなことになった、と言う次第。
でイギリスの言うことには何でも反対しないと気が済まないフランスは「何でわざわざインチをメートルに換算するねん。メートル法はうちが本家や」とばかりに独自規格を作るんですな。25.4mmのところを25mm、28.6mmは28mm、22.2mmは22mmてな具合。大きくは違わんところがご愛敬ですが、まぁこんな具合なので古いフランス自転車やパーツにうかつに手を出すと泣きを見ることになります。まぁ90年代以降、さすがに見かけなくなりましたが。
ところで34.9mmってのは、これ1.375inchのことなんですね。つまりISO/BSC規格のBBサイズの元になったもの。ここ、なぜかイタリアンサイズつて36mmのもあるし、おフランスはもちろん独自で35mm。ええ、えぇ。正直、えぇ加減にせぇ!と思いますよ。
2011/11/20

パイプの種類・多彩な材質
オーダーのほとんどはスチール系パイプでしょう。鋼を主に様々な金属を加えた合金ですが、これが実に種類が多い。私がこれまでに所有したものだけでも優に10種類以上あるし、乗ったことのあるものを含めると、その倍にもなります。これでも市場に出たものの何分の一でしょうかね。乗ってそんなに違いがあるの?という疑問をお持ちの方もいらっしゃると思いますが、驚くほど違うんだな。もちろんスケルトン等が完全に同じで乗っているわけではない(おまけに体力は年々衰えるし)のだけれども……。
主材料の鋼に加える金属は、クローム、ニッケル、モリブデン、バナジウムなど。配合比率はごく微量で、ほとんどが1%以下です。たったこれだけを加えるだけで強度が増したり粘りが増したり、様々な味付けができるわけで、金属って不思議だね。
クロームとモリブデンを中心に添加したものが「クロモリパイプ」。スチール系フレームの代名詞ですね。
一般にスチールフレームのことを「クロモリフレーム」と呼びますが、例えば有名な「レイノルズ531」はマンガンとモリブデン、「コロンバスジェニウス」はニッケル、バナジウム、クローム、「カイセイ8130」はニッケルとクロームが主な添加材料。なのでメーカーは「マンガンモリブデン鋼」「ニバクローム鋼」などと厳密に呼んでいます。講釈を垂れる人がごっちゃにしてたら、いちいち重箱の隅を突いて嫌われるのも面白いかと。
ところで、そんなにある中からどれを選べば委員会?って話は続きで。(とやって、コンテンツ量を稼ぐ、と)
2012/1/4

パイプの乗り味・想像以上に違うもの
あまたあるスチール系パイプの中からどれを選ぶか。これは自分の体力、走り方、好みをビルダーと十分に話し合わないと後で後悔します。
ニッケルを多く含んだものは総じて、クロモリ系よりも硬い。パリッとした硬さがする。
焼き入れ処理をしたものは、そうでないものに比べてバネ感が強い。踏んだ際の戻りが早いような気がするし、リブ補強をしたものは重たい硬さがする。
カイセイを例に取るとスタンダードの019、022よりも8130系はパリッとしていてULTIMA−Rはバネ感がさらに加わる。
レイノルズでは、しっとりとした531なんかに比べて753あたりだとずいぶんはっきりした硬さだし、853に至ってはバネ感の固まり。
人によって体力も体重も走り方も違うので、ある人にはちょうど良くても別の人には合わないなんてことはザラにあります。例えばレイノルズ853のシール、格好いいからつてブランド小僧をやってしまうと、まともに走らせられない、なんてことにもなりかねませんよ。
2012/1/29