白ベイ赤ベイ
FIXEDの悦楽」などでおなじみ名古屋在のベテランNさんから、新たなコンテンツをいただきました。
わざわざ福岡西部の藤崎まで足を運んでNAMBEIピストラーダをオーダーされたNさん、最近、2台目のNAMBEIを発注、無事完成して手元に4台のピストラーダが並ぶことになりました。
オーダーしたNAMBEIの試乗記が南米商会のブログに掲載されていますので、そちらをご覧下さい。オーダーするに至った経緯や最近の輪界のことなど、ビョーキと良識と、ひとつまみの狂気(&驚喜)で出来ている趣味人の本音です。

まだまだ続くジジイの繰り言(ラグワーク編)
閑話休題、
サドル、ペダルを取り付けて、惚れ惚れと見とれてしまいました。丸フォークや太いチェーンステイは確かに威圧感がありますが、ちょっと旧めのパーツで纏めた『白ベイ』はホント美しい。
「これでもか!!」というほど薄く小さく削り込まれたラグワークは、昨今の鉄フレームのラグワークとは異次元のものです。自転車のパイプはごく薄く、焼き入れ、焼き鈍しなどの工程を経て、自転車に適した特性を持たされています。だから溶接の時にも熱を余り加えない方が(加えすぎない方が)、パイプそのものの持つ特性を損なうことが少ない。その意味でラグはロウを効率よく回すためのものではなくてはならないはず。
そして繋ぎ目に加わる力を一点に集中させないために、イタリアンカット、コンチネンタルカット、ファンシーカットなど、様々なラグカットが考案されてきた。装飾的な要素の大きいファンシーカットでも、それを考案した職人は「単なる飾り」としては考えていなかった。僕はそう思います。
『赤ベイ』に乗っていつも感じるのは、「ホント素直な乗り味だなぁ」ということです。「自己主張が少ない」、あるいは「どこにも乗り手の身体に突き刺さってくることがない」と言ったら良いでしょうか。これは「『赤ベイ』がほとんど『残留応力』を残さずに出来上がっているからではないか」と僕は推測していました。そして南米さんのブログ『マリちゃん号』の製作記で、「ボトル台座などの小物の工作をまず行う」、「エンドをまずつける」という記載を読んで、この推測は確信に変わりました。
パイプの溶接順や、フォークブレードとフォーククラウンとの溶接(僕が見落としいているのかも知れませんが、フォークブレードに溶接の時の熱を逃がすための小孔が穿たれていないのは不思議です)など、企業秘密に関わることは判りません。でも南米さんでは「溶接後に力で歪みを取る」ということは、ほとんど、あるいは全くされていないのではないか(編注:お察しの通りやってません)。
「溶接後のパイプの冷却」にも特別なノウハウがあるのではないか。さらに溶接前の「パイプどうしの摺合せ」も水が漏らないほどに丁寧にされているのではないか。僕はそう睨んでいます(編注:大変な手間のようです)。そして「これでもか!!」というほど薄く小さく削り込まれたラグワークも、『残留応力』を無くすためのものではないかと僕は考えています。(あくまで素人の考えたことですから、誤解の無いように…)
「それに比べて…」とは言いたくはありません。でも昨今の鉄フレームのラグワークは、そんなラグワークの本質を忘れているとしか言いようがない。既製品のラグをそのまま取りつけたかのような直線的とも言えるラグカット(もう1mm削り込めば綺麗なラインになるのに…)、しかもボッテリと分厚い(最近は手ヤスリをかけなくてもベルトサンダーがあるんだから…)。そんなラグが「メッキ出し」してあるんだから、これはもう「無残」としか言いようがありません。

まだまだ続くジジイの繰り言(フォーク編)
こんな「無残」なラグをつけている自転車のフォークを、僕は絶対に信用しません。初めて南米商会さんを訪問した時(もう15年以上も前になってしまいました)、当時の社長さんから「フォークブレードのちょっとした左右差は、ダウンヒルなどの時に、フレーム全体の異常な振動を起こす原因になる」とお聞きしました。その時は「そんなにスピード出せない僕には関係ないよな」と思っただけでした。その後、レ○ンのカーボンとチタンのハイブリッドバイクのカーボンフォーク(トレ○ク製)が、下りで何となく違和感を感じさせる。特にブレーキをかけたときに、フロントハブがなんか捻じれるような、撓むような感じがある。それが原因でこのバイクには乗らなくなってしまいました。(フレームそのものは素性の良いフレームらしいので、いつか南米さんでフォークだけ作ってもらおうと思っていますが、最近はピストラーダばっかりなので…)
こんなジジイでも判るほど、フォークは大切なもの。ある意味で「命を預けている」と言っても過言ではありません。リ○ロのフォークがすっぽ抜ける事故が多発し、NJS登録を取り消された事件も頭をよぎります。こんなフレームでも30万円を超す正札をぶら下げて売られているんだから、もはや正気の沙汰とも思えません。

「アンタにゃアタシは乗りこなせないね」と言われても
「アンタにゃアタシは乗りこなせないね」と言われても、やっぱり乗ってみたい。
某サイクルにボトルケージとサイクルコンピューターを買いに行きました。ニットーのクラフトステムにはTAの鉄ケージが似合うはずですが、オジサンは「もう無いよ」とのこと。「国産パーツで纏める」というコンセプトを思い出し、ニットーのステンレスのボトルケージにしました。サイクルコンピューターもキャットの白。黒以外のサイクルコンピューターを選ぶのは初めてです。
取り付けてみるとステムとボトルケージの光具合がピッタリ。サイクルコンピューターの白も『白ベイ』にはよく似合っています。「俺の見る目も満更ではないな」と一人悦に入るジジイ。気持ち悪い〜〜〜。
『赤ベイ』と並べて気が付いたのですが、この時代(編注:70年代から80年代)の国産パーツの仕上げはカンパ、チネリなどの舶来物(もはや死語ですね)よりも良い。特に顔が映るほど磨きこまれたハブには、職人の意地を感じます。ニットーのステンレスのボトルケージに比べると、『赤ベイ』のダウンチューブに付けたTAの鉄ケージの仕上げはむしろ雑。シートチューブに付けたTAのアルミケージはもはや「使い捨て品」といった感覚の仕上げ。
耐久性などは乗ってみないと判らない話ですが、耐久性を云々できるほど乗るわけじゃないし…。これまで舶来物に拘って、国産パーツを格下に見ていたジブンを深く恥じました。

さて、次のお天気の良い日曜日、ジジイは『白ベイ』との逢瀬を楽しむことができるでしょうか。それとも「もぉ、終わりなの。アンタってやっぱり駄目ねぇ…」と言われて憤死するのか。
乞うご期待…。