麹の話・1
芋焼酎に使われる麹は、現在は白麹が主流です。
1932年(大正7年)に泡盛に使われていた黒麹菌(泡盛黒麹)の変種から分離した突然変異株で、「肺の中まで真っ黒になる」と言われていた焼酎造りの環境が一変したことで急速に普及しました。発見したのは、当時、熊本税務監査局(今の熊本国税局)技官だった河内源一郎。
河内は、泡盛黒麹を芋焼酎造りに導入した人物でもあります。1910年(明治43年)、泡盛黒麹から芋焼酎に適した菌の分離に成功、この菌(アスペルギルス・アワモリ・ヴァル・カワチ)が現在の芋焼酎隆盛の原点になっています。
河内以前の芋焼酎は、というと日本酒と同じ黄麹を使っておりました。
残念ながら黄麹は、雑菌の繁殖を抑えるクエン酸を作る能力が低く、暑い鹿児島では醪が腐りやすくて、当然品質もあまり良くはなかったようです。河内は、業界の要請に応えて安定して生産ができる麹の開発に取り組んでいたのでした。河内が作り出した黒麹のおかげで、芋焼酎の生産は3割方上がったといいます。
閑話休題
約10年ほど前からでしょうか。黄麹を使った芋焼酎造りが再び流行しています。現在の技術なら醪を腐らせる心配はほとんどありませんし、低温でゆっくりと仕込む必要のある黄麹を使うと、黒白麹よりも柔らかく軽い感じのする焼酎が作りやすくなります。これが女子供(子供、はまずいか・・・)まで芋焼酎をファッションで飲むブームに乗って大流行し、今では立派に一分野となってますねぇ。
ところで、麹について黒白黄の違いが焼酎の風味の違いを決めるかのようなことを言う半可通がおりますが、これは当たらない。ひとつの要素には違いはありませんけれども、黒でも白でも黄でも、ちゃんと造った焼酎はイモの香りとコシがしっかりしていて味わい深いものです。この話はいずれまた。
ヘ(^^ヘ)(ノ^^)ノ
黄麹蔵の話がいつまでたっても出てきませんな。
(^_^;)
ちょっとフルーティーで軽くてさわやか。彼女とロックでどーぞ。
黄麹蔵 国分酒造協業組合(鹿児島県霧島市国分川原1750
2008/9/15

焼酎の吟醸
よそものが一番多く飲み、第一次焼酎ブームの立役者「白波」は、実に多様な製品を送り出しています。以前、20度の「白波」をご紹介しましたが、こちらは「伝承」なるサブネームを持つ「白波」です。
どっしりとしてちょっと辛口で、イモの味わい豊潤な持ち味をそのままに、雑味をすっかり取り除いた感じの上品な口当たりです。
瓶の意匠も良いですね。個人的に数ある芋焼酎の中で一番洒落ていると思います。
サツマイモは、米などの穀類に比べて痛みやすい原料です。痛んだ部分を取り除いて仕込まないと、変な苦みやエグ味の原因になってしまいます。包丁を持った地元のおばさんたちが痛んだ部分を包丁でバサバサと切り落としていく、人力に頼るほかはない作業です。
手間はかかるし材料の歩留まりは悪くなるし、当然、コストに跳ね返る。当ったり前の話ですわな。しかし、こうした手間をかけている焼酎はどれもすっきりとした味わいを持っています。蔵が付けた値段、ってちゃんと合理的理由があるのであります。ブローカーとは違いますな。
白波伝承 薩摩酒造株式会社(鹿児島県枕崎市立神本町26番地)
2008/9/15

篤姫酵母
「篤姫酵母」と名付けられた新種の酵母を使って醸造、今年2月に売り出されたばかりの焼酎です。熟したイチゴのような香りとほのかな甘味があって、大変おもしろい。指宿の焼酎らしく柔らかでふくよかな風味もあります。
ただ、割り水に使っている「高牧の森の水」とはどーも相性がいまいちで、和水すると妙にツンツンしてしまい、和水せずに割ってすぐにぬる燗でいただいた方が特徴がはっきり出ておいしかったですね。
別の割り水を探した方が良さそうです。
\(^^\) (/^^)/
焼酎の話題になると、なぜか麹ばかりが注目されています。言わずもがなですが、原料が持つでんぷんを酵母が食べられる糖の形に変えるのが麹の役目であって、アルコールを造るのは酵母の仕事なのですね。
日本醸造協会が頒布している品質の安定した酵母もありますが、原料となる米やイモにも野生の酵母が付いていますし、その蔵で(多分、勝手に)育っている「蔵付きの酵母」もいて、渾然一体となって風味の違いを生み出す理由の一つになっています。
\(^^\) (/^^)/
さて、「篤姫酵母」は、鹿児島県と県内の焼酎業界の寄付で運営される鹿児島大学農学部焼酎学講座が開発しました。産学協同が実を結んだ良い例ですね。
天璋院篤姫ゆかりの今和泉島津家の別邸跡(現:指宿市立今泉小学校)で100か所の土をサンプリングして分離されたそうな。
現在の設備と技術で扱うことができ、一次仕込みでの酵母培養に要する時間が短く、二次仕込みでも発酵速度が速い(要するに食いしん坊なのね)といいます。
この酵母、鹿児島大学が商標登録していますが、焼酎メーカーには無償で提供されていますので、目に触れる機会は増えてくると思います。
天翔宙 有限会社大山甚七商店(鹿児島県指宿市西方4657番地)
2008/10/4