宮崎市の北、西都市で家族で焼酎を造っている大変小さな蔵があります。そこのメーンがこの芋焼酎。
宮崎県の出来の良い芋焼酎は、十分に練れた感じはあるもののライトボディで切れが良い、どうかすると甘味を感じることもありますね。
こやつもまったくその通り。
この蔵は、ご家族4人で年間で芋焼酎200石、麦焼酎60石を生産しているのだそう。別に少ない人数で造っているから偉いんではなくて、そこからできる焼酎がうまい。
宮崎県や県財界、団体などで作る「みやざき観光コンベンション協会」のホームページ「みやざき観光情報 旬ナビ」にこの蔵の紹介が載っています。仕込みの苦労や、芋焼酎を作るようになった経緯など、大変興味深く読めます。引用はできませんのでぜひご一読下さい。
「月の中(つきんなか)」の由来も出ていますよ。
月の中(つきんなか) 岩倉酒造場(宮崎県西都市大字下三財7945)
2009/7/12

「月の中(つきんなか)」の蔵が作る麦焼酎。ちょっと泥臭い麦焦がしの香りと味が適度に残り、麦焼酎独特のツルンとした味わいもあるので芋焼酎の強烈な香りが苦手な人には飲みやすいと思います。芋焼酎に慣れた人にも、またちょっと風合いが違っていいのではないかぃな。
焼酎を造るには、まず米麹を仕込みます。麹に含まれる酵素が米麹のデンプンを糖に変え、この糖をエサに酵母がどんどん増えていきます。十分に酵母が増えた頃合いを見て、主原料のイモや麦を仕込むと主原料に含まれるデンプンを酵素が分解して、どんどん糖に変え、それをたくさんの酵母が片っ端からアルコールに変えるわけですな。
都合2回仕込むので、二段仕込み。これが主流になっています。(古来の製法に両方をいちどきに済ます「どんぶり仕込み」てのもありますが、これはまたの機会に)
壱岐焼酎などに、二段仕込んだ後にもう一度主原料を仕込む「三段仕込み」をやるところもあるようですが、この蔵の3回目は、もう一度、米麹なのだそうだ。それを常圧で蒸留して3年間寝かせた後に出荷するといいますから、これも手間がかかっていますねぇ。
三段じこみ 岩倉酒造場(宮崎県西都市大字下三財7945)
2009/7/12

上の「三段しこみ」、アップ日よりも2週間ほど前に書いて寝かせておいたのですが、寝かせておいた間に某氏がこれを差し入れてくれました。”どんぶり仕込みの焼酎を仕入れんといかんなぁ”と思っていた矢先に、ちゃぁんと先方から舞い込んでくるんだもんね。日ごろの行いが良いと、こーして必ず良いことがある、って何かピントがずれているような気がしないでもない。
麹と主原料を一緒に仕込んでデンプンの分解とアルコール生成をいちどきにやってしまうのを「どんぶり仕込み」と称しています。一番単純な方法ですので、二段、三段仕込より以前の製法とされています。味が濃く時に酸味を感じることのある荒々しい焼酎になりやすいと聞いていますが、これはしっかりしたコクとイモの甘味は十二分に感じるけれども酸味や荒々しさはない、どちらかといえば上品な味で焼酎を飲み慣れた人には大変おいしく感じるのではないでしょうか。
ちなみに「蕃薯考」。青木昆陽がまとめたサツマイモの効能、栽培法をまとめた書物「蕃薯(藷)考」にちなんでおります。徳川吉宗の命を受け、サツマイモを全国に普及させた青木の尽力で、多くの庶民が飢饉から救われた、というのは皆さんご承知の通りです。
蕃薯考 薩摩酒造株式会社(枕崎市立神本町26番地)
2009/7/20