Fixedの悦楽」でご紹介させていただいた名古屋在の自転車愛好家Nさんから、初めてプロショップを訪れる方に、とアドバイスを寄せていただきました。
プロショップといえば、気難しそうな店主に横着な常連。初めての方には敷居が高いところです。
でも、仲良くなってしまえば高い技術と豊富なノウハウ、ハードソフト両面においてこれほど心強い所はありません。ただ、大変高価な品物を扱っていることもあり、一定のマナーがあることも事実。
ベテラン、常連も素直に耳を傾けてもらいたいことも数多く含まれる、大変示唆に富む一文です。ぜひ参考にしてください。

○生半可な知識をひけらかすのは損
雑誌、インターネットで仕入れた情報を、得々として話しているお客さんを時々見かけます。
先ほども述べたように情報は、雑誌やインターネットでいくらでも手に入れることができます。しかし『知恵』や『センス』はそうはいきません。このパーツとこのパーツの組み合わせは、どういうわけかうまくいかないということもあるのです。
逆に使えないはずの組み合わせでも、ちょっとした工夫で使えることもあります。チタンのステムを買おうとしたところ、「このステムは使っているうちに、チタンが伸びるのか、緩んできてしまうよ」と言われたこともあります。

ロードのハブに、本来は使えない(メーカーでは推奨しない)マウンテンのスプロケットを入れてくれたこともあります。プロとはそういうものです。
余談になりますが、ハンドルステムやシートピラーなど、性能に直接関係のないパーツの選択は、絶対にプロに任せた方が良いです。
ステム、ピラーはその自転車のオーナーの『センス』が最も発揮されるところです。ここの選択を間違えると、いわゆる『ダサイ自転車』になってしまいます。値段的に安いものや、型落ちのものがいけないと言っているのでは決してありません。
フレームとの相性、ハンドルとの相性、サドルとの相性で、値段的に安いものでも、型落ちのものでも、「あぁ、良いセンス」と思う自転車はいくらでもあります。
ついでながら、アウターワイヤーが長すぎるとか、インナーワイヤーの端が長々と伸びているとか、ワイヤーエンドがきちんと処理されていないとか、タイヤの取り付けが前後でばらばら(チューブラータイヤでは必然的にバルブの反対側にタイヤのマークが来ますが、WOタイヤでは取り付けるとき注意しないと、タイヤのマークとバルブの位置が前後のホイールでばらばらになってしまいます)とか、サドルバックのストラップが緩くてサドルの下でバッグが踊っているとか、そんなつまらないことで、『ダサ〜』と思われてしまいます。
そういうことをきちんとしている自転車を見ると、どんなに古い自転車でも、価格的に安いグレードの自転車でも、オーナーの自転車に対する思いが伝わり、「あぁ、良いセンス」と、僕は思ってしまいます。

○雑誌の試乗記事は、あくまで参考
試乗記事はあくまで参考です。2000年に始めて南米商会を訪問した時、社長さんが、「自転車の性能の6割(7割だったかもしれません)は、ホイールの性能、後の3割(2割だったかもしれません)がフレームの性能、ディレイラーなどのコンポの性能は1割」と言われたことが、忘れられません。
最近は自転車の雑誌もあまり読まなくなったのですが、どのホイールを使ったのか、タイヤの銘柄は何か、タイヤの空気圧はどのくらいかということを明記した試乗記事を、寡聞にして知りません。
ある自転車を激賞してあったとしても、それはその時たまたま履いていたホイールを激賞しているのかもしれません。また前にも書いたように、自転車は自重よりも重い荷物を運ぶ乗り物なのに、試乗したライダーの体重が明記してある記事も、あまりないようです。
さらに乗り手の技量その他で、自転車に対する印象はまったく違います。極端なことを言えば、同じ自転車でも先週乗った時には「こんなに良い自転車はない」と思ったのに、今週乗ったら「こんな自転車今すぐに売り飛ばしてやる」と思うこともあるのです。
それは自転車のせいではなく、乗り手の問題のなのですが、人間とは弱いもので、自分のせいにはしたくない、どうしても自転車のせいにしてしまいがちなのです。
試乗記事を当てにするなと言っているのではありませんので、誤解のないように・・・。

○自転車単体で格好よくても仕方ない
自転車に乗った自分をリアルタイムで見ることはできません。
でも停まっている自分の自転車を見ることはできます。だからどうしても『自転車単体での格好よさ』を求めてしまい勝ちになります。
具体的には、「高いサドル、低いステム」にしてしまい勝ちということです。でも無理なポジションで乗っている人は、自転車との一体感が感じられず、格好よくはありません。自転車店が薦めてくれたポジションを、とにかく守りましょう。
ロードレーサーに慣れるまでは、『ステムは高く遠く、サドルは低め』が基本です。