以前、紹介した「八幡」の高級版。「八幡」でも、驚くほど良くできた焼酎ですが、これはさらに材料を厳選して醸造したもの。「八幡」の辛さが少しだけマイルドになっているような気がしますが、十分に発酵して練れた感じの口当たりなどは、八幡の持ち味ですね。
「八幡」や「さつま寿」を生んだ鹿児島県川辺町(今は南九州市ですね)は、万之瀬川の豊かな水と、周辺に広がる田畑で獲れる農作物で県内では有数の豊かな土地柄です。近在の気心の知れた農家が有機栽培したイモと裏山から湧き出る地下水で、昔ながらのカメで仕込むそうです。もう四半世紀前になりますが、ある蔵で「大きな琺瑯タンクで造るよりも、カメで仕込んだ方が良く発酵する」という話を聞いたことがあります。現在では技術も進んでいるでしょうから、そんなことはないのかも知れませんが。
カメは意外に小さなもので、1石(180L)から3石程度だそうな。つことは、1石のカメで一升瓶100本分ですから、カメが100個あって、全部が焼酎になっても(んなぁこたぁ絶対にない)、1万本。蒸留の歩留まりを考えるとこの何分の一?
カメ造りは、大きなタンクで造るのに比べて遙かに人手を食うのでコストがかかります。カメ30〜50個って蔵が多いので、全国に流通させようと思うと、こりゃ微々たる数量ですわね。
こうして出来た焼酎が貴重品になるのも仕方ないですね。
田倉 高良酒造有限会社(鹿児島県南九州市川辺町宮4340)
2008/10/5

イモの来た道・2
芋焼酎はいつ頃から飲まれ始めたのでしょうか。鹿児島で本格的にサツマイモが栽培されるようになったのは、18世紀初頭、前田利右衛門が持ち帰って以降であることは間違いありませんが、大体18世紀半ばだろうというぐらいで、それ以上のことはわかりません。
それまでは雑穀や米が原料だったはずです。最古の焼酎記録(「戦国の酒飲み」参照)にある焼酎は、当時の生産力などからヒエやアワなど雑穀を原料にしたものと言われています。その後、米に余剰があれば焼酎を造ったと思われますが、大変高価で貴重なものであったに違いなく、ごく一部の富裕層のみが味わえるものだったのでしょう。
サツマイモの栽培によって、18世紀以降、庶民は飢饉の恐怖から逃れることができ、余った芋を原料にした新しい酒「芋焼酎」も手にすることになったという次第。
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一番歴史のある蔵はどこか? という疑問に答えるのは大変難しい。農家のささやかな楽しみとして造られるようになった経緯からして、自家消費用に造られていたものが求めに応じて生産量を増やし、蔵元として専業化していきました。
今でも、地域の小規模な蔵が集まり統一ブランドで造っているところが数多く見受けられるので、そうした小規模な蔵の中には18世紀半ばから脈々と造り続けているところがあるかも知れない。

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名前が売れている蔵元で、最古の部類にはいるのが鹿児島市の「相良酒造」。1730年(享保15年)に初代相良仲衛門が開業したとあります。当時は灰持酒(あくもちざけ=もろみを絞る前に木灰を加え、保ちを良くした濃厚な日本酒)の製造でした。
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初代の名前を付けたアルコール度数30度のちょっと高級品。黒麹で仕込んでありますが、芋の甘い香りと柔らかな口当たりはなかなかのものですよ。やっぱりこれも湯割りがよろしい。
相良仲右衛門 相良酒造株式会社(鹿児島県鹿児島市柳町5番6号)
2008/10/13

うーん。すんげぇ贅沢だな。このページ。(^_^;)
「田倉」に「相良仲衛門」に「神座」かい。
「神座」と書いて「かみくら」。一部の飲んべいから熱狂的な支持を集める「さつま寿」の尾込商店の最高級品。
黒麹で仕込み、アルコール度数が若干高い28度。「さつま寿」独特の油分を取り除き、どっしりとしたコシとコクをそのままにほんの少し辛口で上品にした感じ。うまいねぇ。
鹿児島県内すべての蔵元の焼酎を揃えている居酒屋の大将に「さつま寿に似た焼酎を」と頼むと「そりゃ八幡でしょ」と言います。今ひとつピンと来なかったのですが、これをいただいて納得。確かに、芯は一緒だわ。まだまだ修行が足りません。
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川辺町から加世田一帯には「木花開耶姫」の神話が残っています。「コノハナサクヤ姫」。高千穂峰に天孫降臨した瓊々杵尊(ニニギノミコト)が、より広い土地を求めて「阿多(現在の加世田、川辺一帯)」にやってきた時に彼女を見初めた。という話。
二人は笠沙宮(加世田にあったと言われています)で過ごし、「火欄降命(ホノスソリノミコト=ホデリノミコト)」、「火遠理命(ノヲリノミコト=ヒコホデミノミコト)」ら3人の子供に恵まれます(諸説あり)。火欄降命が海幸、火遠理命が山幸、といえば、皆さんよくご存じの海幸山幸神話。川辺町から南に下った開聞町に海幸山幸を祀った枚方神社があります。ついでに言えば、山幸の孫が神武天皇です。
「神座」って名前、そんな伝説を踏まえているのでしょうか。
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ナースマンさん。大変美味しかったよん。珍しいものをありがとー
神座 株式会社尾込商店鹿児島県南九州市川辺町平山6855-1
2008/10/24